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Reinventing Organizationsの邦訳が出版されたことで、Tealという言葉を良く目にするようになりました。
Teal Organizationについて、新しい組織マネジメントの思想として可能性を感じるし、長い目で見れば「自律分散化」された組織形態が広がっていくことは間違いないのだと思っています。

一方で、だからといって手離しに「Tealは素晴らしい!」「これからはTealだ!」というのは大きな間違いで、事業や組織の特性によって合う・合わないが分かれるものだと理解しています。
あくまで「現時点での私の理解」ですが、どういう組織が「合わない」かを整理してみます。

Tealが「合わない」組織の特徴

1)事業目標が明確。

Tealでは自然発生的な意思決定を促していく分、「期限が定められた目標」とは相性が良くありません。
分かりやすくは「年間の売上目標が決まっている」公開企業、株式で資金調達をしていて「exitが求められている」ベンチャーなど。

Tealは自然を模した「生態系」なので、「庭の植物を対前年30%の高さにする」と決めてもしょうがない、という比喩を使うとイメージが湧くでしょうか。

2)結果を出すスピードが極めて重要。

事業展開のスピードがとにかく最重要である組織の場合も、やはりtealは相性が良くありません。
一例としては、初期の市場占有率がその後の競争優位性に極めてインパクトがあるプロダクトなど。

Teal型のように意思決定を自律分散化させるということは、意思決定のプロセスに時間を掛けることでもあります。
「敵よりも早く戦地で有利な場所を押さえる」みたいなスピードが唯一無二の正義である場合には、厳密な指示命令系統を司って走り切ったほうが成功確率が高くなりやすいです。

3)競争優位が「特定の個人」に紐づく。

Tealのような自律分散型の意思決定では、「特定の個人」の意見が意思決定に反映されるとは限りません。
ただ、圧倒的な世界観を持つ「プロダクトオーナー」がプロダクトのコアを担っている、「超豪腕な経営者」の経営センスが事業の行方を大きく左右する、などの場合は、その特定の一人が意思決定に深く関わっていることが事業を伸ばす上では必須になります。

もちろん、最後の意思決定だけはプロダクトオーナー/経営者が担うけど、それ以外は超フラットで限りなく自律分散、という組織はありえます。
(先日お話を伺ったハードウェア系のスタートアップはまさにそんな形でした)

4)「均質性」が重要な提供価値である。

同じ価値を繰り返し提供し続けることが重要である場合。エネルギー、交通などのインフラ系の企業などが典型例です。

個々の自律的な判断を優先している中で、「同じ価値を均質的に届け続ける」ことを望むのはとても筋が悪いです。明確なルールや仕組みを定め、それに基づいた運用をする、といったOrange/Amberなどの世界観が相性が良くなりやすいです。

「事業」と「組織」を混ぜ合わせて考える

4つの切り口の仮説を挙げましたが、すべて「事業」とのつながりの話に行き着きます。
言ってしまえば当たり前なのですが、「組織マネジメント」だけを切り出すことに意味はなく、「事業」と「組織」の両面が一体となって考えられていないと、実効性のある議論になりません

ただ、この「事業」と「組織」の関係性というもの自体も変わってきています。

「同じものを大量に作る」ことが重要だった時代では、
①筋の良い事業計画を立案し、
②経営資源(ヒト・モノ・カネ)を集め、
③組織的にやり切る、
という順序がセオリーでした。言い換えれば、「事業のゴール」を実現するための「手段としての組織作り」でした。
(図の左側の状態)

しかし、変化が早く、優秀な人材ほど流動化しやすい今の環境においては、①②③はいずれも変化が求められています。
①筋の良い事業計画を立案する→①’状況に合わせて柔軟に計画を変更する
②経営資源(ヒト・モノ・カネ)を集める→②’優秀な人のマインドシェアを獲得する
③組織的にやり切る→③’目指す方向は維持しながら状況の変化に迅速に対応する
ここに至ると、「組織のゴール」(≒どんな”良い”組織を作りたいか)は「事業のゴール」(≒事業を通じて何を達成したいか)と等しく重視され、相互に有機的に結びつけて考えらている必要があります。
(図の中央の状態)

さらに、個人的な”感覚”が含まれてくる話ですが、本当にTealの世界観を体現しようとすると、「事業のゴール」と「組織のゴール」を別モノとして扱う、というスタート地点がもはや「筋が悪い」のだと思っています。
(図の右側の状態)

もちろん、良いビジネスモデルは必要だし、実現したい良い組織状態を考えていくことも必要です。
ただ、本当に生態系のように自律分散化が進んでいく組織であれば、「事業を改善するために、チームの役割をガラッと変える」とか「メンバーがパフォーマンスを発揮できる方向にビジネスモデルを軌道修正する」みたいなことが個々の現場で自然に起きるはずで、そこでは「事業」と「組織」という二分法にすること自体があんまりフィットしません。

自社に合った「組織の姿」を選択する

Reinventing Organizationの中にも書かれていますが、どんな組織でも「100% Green」「100% Teal」となるわけではなく、ある切り口ではOrange、違う切り口ではTeal、など、多面的な顔を持っています。
また、それぞれの企業ごとに、事業特性、組織文化、経営陣や人材の個性、財務状況など、固有の現実が既に存在します。

冒頭に書いた通り、必ずしもTealというのが手放しに賞賛され、どんな組織も「目指すべきもの」だとは思っていません。(既にある企業が本当にTealの世界観へ変化しようとすると、経営者自身の内面的な変容が求められることも多いです)
それぞれの組織において、「自社にとって”良い”組織の姿とは何か?」ということを考えていくプロセス自体が必要であり、その上で自分たちの目指す姿への変容を遂げていけることが重要になります。

※Tealの世界観に近い「自然体」「非管理型」の組織マネジメントを実践する人のための実践コミュニティ「自然経営(じねんけいえい)研究会」をダイヤモンドメディアさんと一緒に運営しています。
詳しくは自然経営研究会のFacebookグループもしくはdoorkeeperを御覧ください。


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